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研究員レポート

貸倒引当金とは?貸倒引当金の計算方法と経理処理の事例

貸倒引当金とは

貸倒引当金とは将来取引先が倒産したりして貸し倒れが発生し、貸倒損失が発生する場合に備え、あらかじめ合理的に見積もれる金額を損失として計上しておくものです。貸倒引当金は将来の損失に備えるとはいえ、経費ですし無制限に計上が認められている訳でなく、収益操作にもつながりかねないことから、あくまでも合理的に見積もれる範囲内の計上に限られます。

税法上、貸倒引当金の対象となる債権は企業の事業に関係する債権で、売掛金、貸付金、受取手形、未収金、立替金等です。逆に貸倒引当金の対象とならない債権は企業の事業とは関係ない債権、例えば私的な貸付金等、また、回収の見込みが高い債権、例えば保証金、敷金、手付金、前渡金、仮払金などは対象外です。

更に税法上、貸倒引当金を計上できる法人は資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の法人、公益法人や共同組合、人格なき社団等で、平成23年の税制改革に於いて規定され、基本的に大企業は計上できなくなりました。

一方、会計上貸倒引当金は負債もしくは資産のマイナス勘定として取り扱われ、また「費用収益対応の原則」というルールがあり、費用と収益を対応させなければならず、原則債権が発生した会計年度末に一定の計算方法により、事業年度末に取り立てることが出来ないと見込まれる額につき貸倒引当金を計上しなければなりません。

貸倒引当金の計算方法

貸倒引当金として計上できる金融債権は、債権の回収可能性に対応し、「個別評価」と「一括評価」に分けられます。それぞれの繰入限度額を見ていきましょう。

 一括評価金銭債権の繰入限度額

一括評価金融債権は支払い期日までに回収の可能性が高い債権で、「貸倒実績率」と「法定繰入率」の2つの計算方法により算出した一定の金額が貸倒引当金として計上出来ます。

 貸倒実績率

過去3年間に実際に発生した貸倒金額の発生率に基づき計算されます。計算式は貸倒繰入限度額=事業年度末における一括評価金融債権の帳簿価格X貸倒実績率。

具体的算出式は以下のとおりです。
{(a+b-c) x (12÷各事業年度の合計月数)}÷ d
a: 過去3年間の貸倒損失合計額
b: 過去3年間の個別評価分の引当金繰入額
c: 過去3年間の個別評価分の引当金戻入額
d: 過去3年間の一括評価分の合計額÷各事業年度の数

法定繰入率

法定繰入率は資本金1億円以下の企業のみに認められています。計算方法は
(a-b) x c
a: 期末における一括評価金銭債権の帳簿価格
b: 実質的に債権とみなされない金額(債務者に対する金銭債権と債務者に対して負っている金銭債務同士で相殺できる金額)
c: 法定繰入率(業種により異なります。例/ 卸売業・小売業:10/1000、製造業8/1000)

個別評価金融債権の繰入限度額

取引先に対する金銭債権で回収できない可能性の高いものについては債務者毎に個別に債権の状態を評価し、貸倒引当金繰入限度額を算定しますが、以下の4つのパターンに分類出来ます。

個別評価金銭債権の4パターンと繰入限度額

個別評価金融債権の状態 貸倒引当金繰入限度額
債務者につき更生計画・再生計画等の認可決定が出ており、その計画に基づいて債務の弁済猶予や分割払いが行われる場合 左記認可決定した日の属する事業年度最終日の翌日から5年以内に弁済することとなった金額を除いた債権額
債務超過の期間が長期にわたり、かつ債務者の経営状態の回復が見込めない場合 債務者に対する債権のうち回収が見込めない債権額
債務者がにつき更生計画・再生計画の手続開始申し立てや手形の取引停止処分が行われた場合 債務者に対する債権のうち50%に相当する債権額(但し、担保の実行などにより回収の見込みがある債権は除く)
債務者が外国の政府・銀行などの場合で、長期間の履行遅滞が発生したことで債権の経済的価値が著しく減少し、かつ回収の可能性も殆どないような場合 債務者に対する債権のうち50%に相当する債権額(但し、実質的に債権と認められない金額は除く)

貸倒引当金繰入と貸倒引当金戻入について

貸倒引当金繰入とは、将来貸倒れとなる金額を見積もった上で引当金として計上し、そのうち当期の費用として繰入れたものです。売掛金等の金銭債権は販売費および一般管理費として計上し、その他の金銭債権は営業外費用として計上します。貸倒引当金繰入額は現金が流出しない費用であるためキャッシュフロー計算書を間接法で作る場合は、税引前当期純利益に加算されます。

一方、貸倒引当金戻入は決算時に前期に費用として設定した貸倒引当金が残っていた場合など収益の増加として計上するものです。繰入れとは逆で貸倒引当金を減らすことです。

貸倒引当金の繰入方法は「洗替法」と「差額補充法」があります。洗替法は決算時に、前期末の貸倒引当金を取り崩し、当期分を繰り入れる方法で、差額補充法は決算時に、前期と当期の貸倒引当金の差額を補充する方法です。税法上は洗替法が原則ですが、一定の要件のもと差額補充法を採用することが出来ます。

貸倒引当金の経理処理(仕訳)

では、具体的に貸倒引当金の経理処理(仕訳)を見ていきましょう。

(1) 事業初年度に貸倒貸倒引当金100万円を設定

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 1,000,000 貸倒引当金 1,000,000

(2) 初年度の期末決算時に、2年目期末決算時の貸倒引当金として120万円を設定。

初年度の期末決算時に、2年目期末決算時の貸倒引当金として120万円を設定した。期首の貸倒引当金残高は100万円だった。この場合の洗替法と差額補充法の仕訳はそれぞれ以下の通りとなります。

洗替法

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 1,000,000 貸倒引当金戻入 1,000,000
貸倒引当金繰入 1,200,000 貸倒引当金 1,200,000

 差額補充法

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 200,000 貸倒引当金 200,000

2年目の期末決算時に貸倒引当金を70万円設定

上記(2)のケースで2年目期末決算時に貸倒引当金を70万円設定した場合はどうなるでしょう。期首の貸倒引当金残高は同じく100万円だったとします。その場合に仕訳は以下の通りです。

洗替法

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 1,000,000 貸倒引当金戻入 1,000,000
貸倒引当金繰入 700,000 貸倒引当金 700,000

 差額補充法

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 300,000 貸倒引当金戻入 300,000

貸倒損失が発生した場合の経理処理(仕訳)

実際に貸倒損失が発生した場合の経理処理(仕訳)を見ていきましょう。
売掛金100万円が貸倒れ、貸倒引当金を計上してなかったケースと、貸倒引当金150万円を計上していた場合、さらに貸倒引当金を60万円計上していた場合の仕訳です。

貸倒引当金を計上していなかったケース

借方 金額 貸方 金額
貸倒損失 1,000,000 売掛金 1,000,000

貸倒引当金150万円を計上していたケース

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 1,000,000 売掛金 1,000,000

貸倒引当金60万円を計上していたケース

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金 300,000 売掛金 1,000,000
貸倒引当金 700,000

参考:貸倒引当金を計上していなかった場合で、翌年度以降に売掛金10万円を現金で回収した場合

ご参考までに、上記(1)貸倒引当金を計上していなかった場合で、翌年度以降に売掛金10万円を現金で回収した場合の仕訳は次のとおりとなります。

借方 金額 貸方 金額
現金 100,000 償却債権取立益 100,000

以上見てきたように、貸倒引当金は事業年度ごとに計算しなければならず、貸倒損失が発生しなかった場合などは戻入れをしないといけません。収益の増加で所得を押し上げてしまうこともあり得ます。貸倒引当金は正しく計上することによって節税効果がもたらされます。貸倒損失を出すと企業経営に多いな影響を与えますので、ルールに乗っ取り正しく貸倒引当金を計上していくことが必要です。

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