Researcher report
研究員レポート
倒産手続きと倒産法(3)会社更生法の仕組みと手続き
会社更生法の仕組みと手続き
会社更生とは
会社更生手続きには管理型とDIP型があります。DIP型は短期間に手続きを遂行できるといった特徴がありますが、進めるためには以下の要件が必要となります。
- 現経営陣に違法な経営責任がない
- 主要な債権者が現経営陣の経営参加について反対していない
- 現経営陣が経営に関与することで会社更生手続きが適正に遂行されなくなる恐れがないなどです。
会社更生の特徴
- 株式会社のみが利用できる
手続に係る手間や費用のために、事実上、比較的大きな規模の大きい企業の利用が中心となっています。 - 裁判所から選任された管財人が会社の経営権、処分権を持つ
例外的に、会社の経営破綻に責任のない取締役が管財人に選任されるケースもあります。 - 担保権、租税債権さえも権利行使を制限される
- 会社の組織再編などを手続中に実施できる
更生計画案に組織再編などに関する事項を盛り込むと、会社法の手続きによらず、実施することができます。
会社更生手続きの流れ
更生手続きを行う場合には管理型手続きを採用するのか、DIP型手続きにするのかなど、申立てをする前に裁判所と事前相談を行います。申立てを受けた裁判所は、保全命令など発令します。更生手続き開始の申立て以降の大まかな流れは以下の通りです。
図1.会社更生手続きの流れ
更生手続中に財産管理を行う機関
管財人は、更生会社の業務や財産管理を行います。管財人は更生手続きを行う際には必ず選任しなければならず、更生手続開始の決定と同時に裁判所によって選任されます。
管理型の場合には、開始決定前に保全管理人が選任されます。保全管理人は、事業経営や財産の管理処分を行う権限を有しています。通常は、保全管理人がそのまま管財人として選任されます。
DIP型の場合は、経営陣に管理処分権が留保されているので、保全管理命令ではなく、監督命令と調査命令が発令され、監督委員兼調査員が選任されるのが通常です。
会社更生手続開始の申立てについて
- 更生手続き開始原因
民事再生の再生手続開始原因と同様です。 - 申立権利者
更生手続開始を申立てることができるのは- 株式会社
- 会社の資本金の10分の1以上の額の債権を持っている債権者
- 会社の総株主の議決権の10分の1以上を有する株主
です。
- 管轄裁判所
原則として、会社の本店所在地や主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所です。
本店所在地などの場所にかかわらず、東京地方裁判所と大阪地方裁判所に管轄が認められています。 - 予納金
民事再生と同様予納金が必要で、金額は裁判所が会社の規模や債権者数などを考慮して個別に決定します。
会社更生手続開始決定について
- 更生手続開始決定
申立てを受けた裁判所は、更生手続開始原因があると認めるときには、申立て棄却事由がない限り、更生手続開始決定を行います。開始決定が出ないのは、再生計画案の作成などの見込みがないことが明らかな場合に限られています。
更生手続開始決定が出た後に、更生手続きがとん挫すると破産手続きなどに移行します。
更生手続開始決定後の手続きついて
更生手続開始決定がなされると、更生会社に対して債務を負っている者は更生会社に対しては弁済してはならない旨などが官報により公告されます。
更生手続開始決定と同時に更生会社の事業経営権や財産の管理・処分権は管財人に帰属しますが、管財人は裁判所の監督に服します。従い、裁判所が指定した行為については、管財人は裁判所の許可を得て行う必要があります。
また、更生手続開始決定がなされると、担保権者は担保を実行することが禁止されます。
財産・債務の調査について
管財人は、財産の状況などを記載した報告書を含め、裁判所が命じた事項についての報告書を作成し、裁判所に提出します。財産評定は、更生手続き開始時における時価により行います。管財人は、財産の価額の評定を完了後に貸借対照表と財産目録を作成し、これらを裁判所に提出します。
また、管財人は、債権者から届出がされた債権について、認否を記載した書類を裁判所に提出します。管財人がその存在を認め、株主から異議が出なかった債権については、届出の内容のまま債権が確定します。
更生計画案について
- 再建計画案の内容
管財人は、債権届出期間満了後の所定期間内に、更生計画案を裁判所に提出します。記載内容は以下の通りです。- 債権者、担保権者、株主の権利がどのように変更されるか
各債権につき何割カットされるか、支払期限をいつまで延期するかなどを記載します。更生会社が債務超過の場合、100%減資を行うのが原則です。 - 更生計画の認可後に誰が更生会社の役員に就任するか一般的に管財人がそのまま取締役として経営にあたる場合が多いようです。
- 共益債権の弁済について
他の債権より優先的に弁済されます。 - 債務弁済にあてる資金をどのように調達するか
資金調達方法を更生計画に記載します。 - 更生計画で予想していた額を超える収益があった場合に、それをどのように使用するか、追加弁済条項などを定めます。更生計画によって債権者らに弁済される額は、破産手続きや清算手続きを行った場合に弁済される額を上回る必要があります。(清算価値保障原則)
- 債権者、担保権者、株主の権利がどのように変更されるか
- 更生計画案可決後について
裁判所は可決された更生計画につき不認可事由がなければ、認可決定を出します。更生計画は、この認可決定により効力を生じます。なお。更生手続きの認可決定後、更生計画が遂行された場合など一定の事由が生じた場合には更生手続終結決定をします。
以上
参照文献:「会社の倒産 しくみと続き」(森公任・森元みのり監修)三修社