Researcher report
研究員レポート
与信管理体制の構築
はじめに
与信管理に関係する部門としては、まず取引先の窓口となる営業部門があり、与信限度額の管理などを行う管理部門があります。管理部門は、与信限度額の設定・管理・見直しを行う審査部門。売掛金の入出金管理、与信管理費用などの予算管理をする経理、財務部門。与信関連法令などを管理する法務部門。与信・入出金の管理をシステムでサポートするコンピュータ・システム部門。そして、与信管理教育を従業員に行う人事部門などがあります。与信管理の目的は貸倒れを少なくし、機会損失を減らして会社の財務体質を強化するとともに収益機会を増やし、会社の発展につながるよう、各部門がそれぞれの役割分担を認識し、協調して効率的な与信管理体制を構築することにあります。次に各部門の役割について見ていきましょう。
営業部門
営業部門は取引先を見つけ、交渉の上、売買契約などを締結し、日々の商品・サービスの販売などを行う部門であり、与信管理上極めて重要な部門です。取引先から直接情報を取れることから重要性が高く、一義的に与信管理の責任を持ちます。また、与信限度額の設定・変更依頼を管理部門に行う部門でもあります。取引先から常に情報を取り、信用リスクに関する重要な変化、また信用不安情報を得た場合には管理部門に素早く報告しなければなりません。
管理・審査部門
営業部門から与信限度額の申請を受け、与信限度額の設定・管理・見直しを行います。この部門が管轄する部門の方法はいろいろですが、営業部門・地域・支店単位で行う方法や本社一括で集中管理する方法、会社の機能単位ごとに行う方法などがあります。
この部門は営業部門と密接に連絡をとり、最新の取引先に関する信用情報などを提供する必要があります。場合によっては、外部の信用情報会社から企業信用調査書、格付け情報などを入手して、取引先の信用リスクを監視します。
経理・財務部門
この部門は、取引先の日々の売掛金の入出金を管理していますので、入出金に異常があった場合、速やかに営業部門と連絡をとり、原因を究明します。さらに与信管理に関する費用・予算の管理なども行い、与信管理に関する予算の配分を行うこともあります。
人事部門
与信管理に関する従業員への教育は人事部門だけでは難しいでしょうから、営業部門、管理部門、または経理部門、法務部門とも協調の上、効率的な教育を行って行くべきでしょう。
法務部門
取引先の与信管理上に重要な変更があった場合などは関係部署に通知すべきでしょう。この部門の役割は、貸倒れ、支払遅延などが起きた時に営業部門と協力の上、迅速に債権保全・回収の為のアドバイスを教示すべきでしょう。
コンピュータ・システム部門
この部門は売掛金管理の為のシステム・サポート等を行うことになります。また、企業の信用リスクに関するシステム・サポートも必要とされるかもしれません。
まとめ
いぜれにせよ、各部門が与信管理に関する役割分担を認識の上、協力して与信管理が効率的に行われるよう努力する必要があると思われます。
参考文献:リスクモンスター(株)編「与信管理論」(株)