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海外損保大手、ロシア撤退 企業に「無保険」リスク

ロシアが2月24日にウクライナを攻撃し始めて以来、ロシアのウクライナ侵略は幅広い経済的影響を引き起こしています。欧米諸国、日本などはプーチン大統領に紛争を終わらせるよう圧力をかけるために、ロシアに対する包括的な金融制裁を制定しました。これらの制裁の経済的影響は、組織が第三国を通じて直接または間接的にロシアと取引するかどうかにかかわらず、世界中の多くの産業に影響を与える可能性が高くなっています。

そんな中、世界の損害保険会社が相次いでロシア向け保険事業から撤退しています。ロシアに現地法人を 持つ欧州保険最大手の独アリアンツが新規契約を停止したほか、伊ゼネラリも撤退を決め た。ロシアが海外の保険会社を排除する法律を成立させたことで、ロシアで事業展開する企 業は「無保険」になるリスクが浮上している。東京海上日動火災保険など国内勢は代替策の 検討を急ぐが、無保険を解消できなければ、ロシア進出企業の撤退を促す可能性がある。 アリアンツは建物の損害を補償する火災保険や事故などに起因した操業停止による減益を補 償する利益保険などすべての保険で新規契約を止めた。米AIGやスイスのチャブ、独HDIグ ローバルもロシアに現地法人を持つ。ある外資保険関係者は「従来通りに全保険の引き受け を続けるのは非現実的だろう」と指摘する。

海外の損保大手がウクライナに侵攻したロシアからの撤退を検討するなかで、この流れを加 速させるきっかけになったのが、ロシアが14日に施行した新法だ。米欧日など「非友好 国」の保険会社や再保険会社、保険仲介会社との取引を禁止する内容で、ロシア国内のリス クを海外に移転できなくなり、ロシアの事業をする企業は今後、補償内容が縮小される可能 性が高い。 世界の再保険市場がロシア関連の保険の引き受けに慎重になっていることも追い打ちをかけ る。ロシアで事業展開してきた保険会社は引き受けた保険リスクの一部をロシア国内の保険 会社や、再保険市場に引き受けてもらってリスクを分散してきた。世界最大の再保険市場・ 英ロイズ保険組合がロシア事業の保険引き受けに慎重になっており、16日には独ミュンヘン 再保険がロシアからの撤退を発表した。

世界の損保各社の収益に占めるロシアの比率はそれほど大きくない。MS&ADインシュアラ ンスグループホールディングスによれば、ロシアの年間保険料規模は1兆8195億円と、中国 (31兆円強)や日本(13兆円弱)を大きく下回る。米保険仲介のマーシュの中沢哲郎氏は 「メジャーなプレーヤーが引き受け停止や撤退を始めると、追随する動きが懸念される」と 話す。

ただ、ロシアで事業を展開する企業への影響は大きい。誰も保険を引き受けてくれない無保 険リスクが直撃するからだ。財務省によると、2020年の日本の対ロシア直接投資額は前年 比15%増の523億円。ロシア極東サハリンでの資源開発事業「サハリン2」など国策に関わ る投資にも一部、民間保険がかかっている。火災保険は原則1年単位での更新のため、契約 更改が難しくなる可能性がある。

日本の損保はロシアに現地法人を置かず、ロシア国内の保険会社や欧州の保険会社を通じて 保険サービスを提供してきた。三井住友海上火災保険はロシアの保険会社と提携し、日系企 業向けの再保険を引き受けてきた。今後、再保険の引き受けはできなくなるが、ロシアの保 険会社に日本企業との契約更改を依頼する方針。補償内容は削られる可能性もあるが、企業 の事業継続性を優先する。 一方、東京海上日動火災保険や損害保険ジャパンはロシアではアリアンツと提携し、日系企 業向けの再保険を受けている。アリアンツが契約更改をしない場合、無保険になる可能性が ある。東京海上と損保ジャパンの2社は顧客企業と対応策の協議を始めた。日本損害保険協 会の船曳真一郎会長(三井住友海上火災保険社長)は17日の会見で「ロシア国内の事業環境 がどう変化するか、しっかり対応する必要がある」と述べた。 無保険を回避するには、多国籍企業が各国に持つ生産・販売拠点を一括保険でカバーする 「グローバルプログラム」と呼ぶ手法を使い、日本の損保本社で直接保険を引き受ける選択 肢もある。ただ、ロシアで免許を持たない保険会社が直接契約することにロシア政府がどう 反応するか読めず、今回は見送る公算が大きい。 日系企業は仮にロシアの保険会社と契約できたとしても条件の悪化は避けられない。現地報 道によると、ロシアは国営の再保険会社の引き受け割合を1割から5割に拡大する法律を新た につくる見通し。リスクを海外に移転せず、ロシアの国内や友好国同士の再保険でリスク分 散すれば、従来より高い保険料になったり、分野によって引き受けられないリスクが出てき たりする。こうしたコストが想定以上に膨らめば、ロシアからの撤退を余儀なくされる企業 も増えそうだ。

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