トランプ政策はドル高に
外国為替市場では、トランプ氏が大統領に返り咲きを果たした場合に、予想される政策によって混乱が生じた場合に備え、ヘッジをかける傾向が強まっている。トランプ氏が共和党候補指名争いの初戦となるアイオワ州党員集会で圧勝して以降、向こう1年におけるユーロの変動に備えた保険に対する需要が高まり、世界の安全通貨としてドルを選好する方向に傾いている。
トランプ氏は再選した場合、中国に一律60%の関税を課すことを検討しているという報道があった。トランプ政権時代の貿易・経済政策で市場に衝撃が走った記憶が呼び起こされ、報道をきっかけに足元でこうした動きが広がっている。米大統領選を背景に、ドルに対しては安全通貨としてのプレミアムが上昇する可能性が高く、これが今年対ユーロでドルを押し上げていると指摘するエコノミストが多い。ユーロは対ドルで現在の1ユーロ=1.08ドル前後から同1.05ドルに下落すると欧州の銀行の一部では予想しているそうだ。
これまではFOMC(連邦公開市場委員会)とECB(欧州中央銀行)による利下げ観測が世界的に金融市場を動かす主な要因として挙げられ、ECBがより早く、より大幅な利下げを行うとの見方がドルを押し上げてきた。だが、市場の関心はここにきて、先進国の金融政策より、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合の外交・貿易政策に向かっており、これはドル高を薦めることになるだろう。