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トランプリスクを考える

米ミシガン州での共和党予備選でトランプ氏は勝ち6連勝となった。早くもトランプ前大統領の再選になるのではないかと心配されている。いまや、「もしトラ(もしかしたらトランプ)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ)」に変わりつつあり、最近は「確トラ(確実にトランプ)」と言われる状況にまで事態は進んでいる。
実際に、トランプ氏が再選されるかどうかはわからない。「ブルームバーグ」が報道するように「トランプ氏、選挙開戦7月に軍資金枯渇の見通し-弁護士費用で綱渡り」(2024年2月15日配信)のように資金の枯渇で苦戦する可能性があるかもしれない。
株式市場にとって、2024年秋に大統領選が控えていることは、米株価にとって上昇基調が崩れないシナリオにプラスという声も聞かれる。おそらく、その根拠は8年前の2016年秋にトランプ・ラリーが起きたことが記憶されているからだろう。
ここではもう少し厳密にトランプ氏の経済政策を見ていくと、トランプ氏の大統領再選は、同時にインフレの再燃でもある。というのも、トランプ氏の掲げる政策の大半は、インフレの原因になるものばかりだからだ。米国経済に再びインフレをもたらせば、金利がまた上昇に転ずることになる。ドルが高くなり、世界中の通貨がまた安くなる。
米国だけではなく、世界中が再びインフレの波に襲われることになる。これまでにトランプ政権がとってきた政策や新たに公約として掲げているものをチェックすると次のようになり、これらの結果としてインフレの圧力が高まると予想される。

1 保護貿易政策

中国からの輸入品に対して60%の関税を課す、というトランプ氏の発言が注目されているが、輸入品の価格上昇につながることになり、インフレ再燃の要因となる。

2 大幅な規制緩和

トランプ政権の誕生は、前回もそうだったように大幅な規制緩和が実施される。規制緩和によって景気が良くなり、株価が上がる。個人消費も拡大し、景気が一時的に良くなることは間違いない。経済が意図的に成長に転ずれば、自然にインフレが始まる。その結果として、インフレは再度の利上げを招き、株価低迷、個人消費の低迷をもたらす。

3 減税による個人消費の拡大

関税引き上げや規制緩和による増収などを背景に、先行して行われるのが「減税」だ。ポピュリズム(大衆迎合主義)政治の典型的なパターンだが、大幅な減税は個人消費を押し上げて、一時的には景気が良くなりインフレが再燃する。

4移民政策強化による賃金上昇

今回の選挙でもトランプ氏が強くアピールしているのが、移民審査の厳格化だ。移民に対する審査を強化することで、移民人口を大幅に抑えてしまう可能性が高い。アメリカの経済成長の源とも言える人口増加をストップすることになり、短期的には影響が出ないものの、中長期的には賃金が上昇することになり、飲食や運送などのサービス価格が上昇し、やはりインフレを招く。

5 金融緩和政策への大幅転換

米国の中央銀行であるFRB議長の任期(2026年5月)が、大統領の任期中に終わるため現在のパウエル議長よりハト派=積極的な金融緩和への転換が予想される。必要以上に金利を引き下げて、景気を刺激する政策に転換することが予想され、景気の押し上げ=インフレを招くことになる。
インフレは、ドル高を招くために、日本を含めた海外でのインフレも深刻化する。インフレは、金融引締め、株価の下落などを招くため、最終的には景気が低迷していくことになる。

とりわけ、2024年内だけを見ると、弱い円と強い株価が維持されるシナリオは、米大統領という材料によってサポートされるのだろう。
参考までに、前回トランプ大統領が誕生した2016年当時のドルの動きをみると、2016年11月8日に投開票が行われた米大統領選のトランプ氏勝利は、多くの市場参加者にとってサプライズだった。翌9日のアジア市場でトランプ氏の優勢が伝わると、ドル円は105円台から急落し、一時101円台前半の安値を付けた。しかし、同氏が9日に行った勝利宣言のスピーチで、1)政党や人種、性別を超えた融和と統一の方向性を示した、2)インフラの再建を行い、多くの雇用を生み出したいと明言した、3)諸外国に対しては敵意や摩擦ではなく、共通点を見出し協力していくと述べ、国際社会に対しても協調路線を示した、などが好感され、米株価が反発するとドル円も反転上昇。10日には106円台後半まで急伸した。
その後も米株価上昇と米長期金利上昇、ドル高の「トランプラリー」が続いた。市場関係者にはあの時のイメージが残っていると推測され、ドルは上がるだろうが、今回は長期金利が上昇し、株価もすでに高い位置にあるため、株価の持続的な上昇は難しいとみる。つまり大統領選までは、強い株価は維持されるだろうが、トランプ大統領が誕生したら、その後はかなり深い調整に向かうと思っている。おそらく日本株もそれに追随することは間違いない。

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