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研究員レポート

主要財務分析指標からみる危ない会社の見分け方

はじめに

企業の決算書を財務分析指標に基づき分析すれば、企業の問題点、粉飾の有無を見つけ出すことが可能です。財務分析指標には、主に以下の分析があります。

  • 収益性分析:企業の総資本で、どの程度の収益を上げているか
  • 安全性分析:貸借対照表の資産と負債のバランスから支払能力
  • 生産性分析:原材料数量と製品数量といった投入と産出の関係
  • 成長性分析:売上高や利益の伸び率、会社規模の拡大など

財務分析の方法

次に財務分析の方法としては、

  • 相互比率分析:貸借対照表と損益計算書など財務諸表のそれぞれの項目間の相対値を見る分析があり、最も広く使われている
  • 構成比率分析:貸借対照表または損益計算書全体に占める割合を見る
  • 趨勢分析:財務諸表の数値を数期間にわたって分析
  • 実数分析:実数そのものを分析
  • 回転期間分析:資産や負債の大きさの妥当性を見る
  • 経常収支分析:現金収支計算を行う重要な分析手法の一つ

危ない会社の見分け方

では、具体的な財務諸表の損益計算書、貸借対照表の財務分析指標から危ない会社の見分け方のチェック・ポイントを見てみたいと思います。

1,預貸率(現預金/借入金総額×100)

現預金が借入金に対してどの程度確保されているかを測る指標ですが、低ければ手元流動性が少なく、借入金の返済が懸念されます。注意しないといけないのは、借入金を簿外表示(粉飾)していると、この比率が高くなりますので、支払金利率(支払利息/借入金総額×100)とあわせてチェックする必要があります。

2,売掛債権回転期間(売掛債権/月商)

回転期間が長いと資金負担も大きくなるため、基本的には短い方が良いですが、業種によって異なります。業界平均に比べて長い場合には次のような理由が考えられますので、実態を調査する必要があります。①焦げ付きの発生、②不渡り手形の存在、③手形ジャンプ、④押し込み販売、➄融通手形の存在、⑥回収条件の悪化、⑦粉飾などです。

一期間中の売掛債権回転期間の変動が小さい場合は倒産しにくく、1カ月以上の変動になると変動の幅に応じて高い倒産確率になると言われています。

3,棚卸資産回転期間(棚卸資産/月商)

本指標は短期間で販売できれば、短くなり良いのですが、品切れを起こすほど在庫が減ると機会損失が発生しますので、業態にあった適正在庫期間であることが重要です。期間が長期化する原因は①過剰在庫、②デッド・ストックの存在、③架空在庫や水増し在庫の存在(粉飾)が考えられ、チェックする必要があります。この指標も一期間中の棚卸資産回転期間の変動が小さい場合は倒産しにくく、1カ月以上の変動になると変動の幅に応じて高い倒産確率になると言われてます。

4.買掛債務回転期間(買掛債務/平均仕入高)

本指標が長期化していれば、手元資金に余力が出て良いのですが、逆に短縮化している場合は理由として①信用不安の問題から仕入先が資金回収を早めてきた、②仕入価格値引きのための現金支払いへの変更など支払条件の短縮化、③粉飾などが考えられ、注意が必要です。

買掛債務回転期間の長期化は①支払先に対して支払手形の期日延長(ジャンプ)、②取引先に対する融通手形の発行、③決済条件の変更などの理由が考えられ、資金繰りの多忙化や経営の乱れを示すことがあるので、これも注意が必要です。

5、借入依存度(総借入/純資産×100)

借入依存度が高い企業は、投資や固定資産の購入などによる資産の膨張に伴って、借入金が増加している場合ですが、借入コストを上回る収益を得られれば、問題ありません。但し、

自己資本が少なく、相対的に借入依存度が高くなっているケースは、企業の収益力は脆弱で、根本的には自己資本を強化していかないといけません。一般的に60%以上になると高い倒産確率になるといわれてます。

6,経常収支比率(経常収入/経常支出×100)

経常収入と経常支出との比率で、資金収支の指標の中で最も基本的な指標です。経常収入は営業収入と営業外収益の、経常支出は営業支出と営業外費用の合計額です。資金収支で重要なポイントは営業収入と営業支出との収支差額で、プラスであれば事業年度内の資金繰りは安定します。経常収支比率は100%を超えていれば安全といえます。経常収支比率が3期以上100%以下で、比率が80%を下回るようであれば、資金ショートの可能性が高まるといわれています。

7.売上高総利益率(売上総利益/売上高×100)

あら利(粗利、または荒利)とも言い、売上原価に対してどれだけの利益を上乗せして販売できているかを示す指標で、企業の収益力を表す重要なものです。業種間格差がありますから、同業他社や業界平均との比較が有効です。また、改善状況をみるため、過去実績との比較も必要です。注意しなければいけないのは、商品仕入価格が上昇しているときには、先入先出法は平均法に比べ売上原価が少なく計上されますので、会計方針の違い、変更などをチェックする必要があります。また市況の価格動向、為替市場に大きく影響を受けますので、これらの動向も注意する必要があります。

この指標のチェック・ポイントは①売掛債権が増加していないか(売掛金、受取手形過剰計上による利益操作)、②仕入債務の過少表示はないか(仕入債務簿外処による利益操作)、③在庫が増加していないか(架空在庫や水増し在庫よる利益操作)、④減価償却費の計上はあるか(未計上による利益操作)などです。

8.売上高営業利益率(営業利益/ 売上高×100)

この指標は企業の営業力を表します。販売一般管理費は会社の営業力、販売政策、管理方針が反映され、売上高総利益率との差が企業によって違ってきます。この指標は一般的に10%が目安といわれてます。チェック・ポイントは貸倒損失や貸倒引当金繰入が正しく計上されているかです。正しく計上されていないと営業利益が嵩上げされます。

9.売上高経常利益率(経常利益/売上高×100)

この指標は通常の営業活動、並びにそれに付随する活動からの利益で、特別損益は含まないので、企業の総合力を表す重要なものです。但し、健全な財務活動から営業外収益が計上されてればいいのですが、財テクなどで利益をあげている企業は注意すべきです。チェック・ポイントは雑収入が多く計上されてないかです。本来特別利益に計上すべき固定資産売却益などが経常利益を嵩上げするため、雑収入で計上されるケースがあるためです。もう一点は支払金利率が異常に高くないかです。預貸率とあわせてチェックする項目ですが、異常に高い場合は①闇金融などから高利の借入をしている、②借入金を簿外処理している(利益操作)、③支払手形のジャンプ(延期分を金利で調整する利益操作)などが考えられます。

その他、最初に書いた財務分析指標に基づく危ない会社を見分ける手法はいろいろありますが、今回は主に財務諸表のうち、損益計算書、貸借対照表から分析できる主要な項目を取り上げました。

以上