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アジアは通貨安にデルタ型拡大。利上げにも動けず

はじめに

外国為替市場ではアジア通貨の苦戦が目立ちます。タイやインドなどのアジア新興国は新型コロナウイルスのインドデルタ型の感染拡大が世界の中で最も深刻ともいえます。景気の減速の懸念も出てきています。中南米やロシアなどがインフレの対応の利上げを進めるなか、アジア新興国の中央銀行は金融の引き締めに慎重となっています。今後アメリカの金融政策の正常化でドル高傾向が強まれば、「3つの重荷」が一段の「アジア通貨売り」を促して世界経済の火種になる可能性があります。

新興国通貨指数が下落

新興国25通貨で構成をする「MSCI新興国通貨指数」をみていくと、7月末は1729台と6月末比で0.4%ほど下落しています。この指数は6月中旬にかけて1750を超えて過去最高水準で推移をするも、ここで上昇に一服感が出てきました。

5月末と比較した7月末時点での主な新興国通貨の対ドルの騰落率をみていくと、ロシアルーブルが0.4%高、ブラジルレアルが0.2%高、メキシコペソが0.1%高と直近で利上げした通貨が強めになっています。一方でタイバーツが5.5%安、フィリピンペソが4.9%安、インドルピーが2.6%安などアジア通貨が軒並み大きな下落となっています。タイバーツに至っては1ドル=33バーツ台とおよそ1年4か月ぶりの安値をつけています。

通貨安が背景に

通貨安の背景には経済状況の悪化があります。国際通貨基金(IMF)は世界経済の見通しを7月27日に改定していきます。新興国と発展途上国の2021年の経済成長率について4月時点から0.4ポイントの引き下げで6.3%としました。アジア圏を1.1ポイント引き下げたのが大きくなっています。一方で先進国の成長率の見通しは0.5ポイント上方修正しています。

ワクチン接種の遅れ

アジア経済の弱さの原因にはワクチン接種の遅れがあります。イギリスオックスフォード大学の研究者らが作る「アワー・ワールド・イン・データ」で7月末時点で少なくても1回はワクチン接種を行った方が世界で28%程度となっています。一方アジアはインドネシアやタイなどが同月下旬で20%弱、フィリピンが10%強などと遅れが目立ちます。タイが首都バンコク周辺の医療機関で病床が不足するなどの医療危機に陥っています。

インフレ対応の遅れ

インフレ対応の遅れも目立ちます。中南米などの新興国では中銀が政策金利の引き上げに動いています。ロシアやブラジルなどはすでにインフレ対応では複数回の利上げを実施しています。そこにメキシコやチリも続きました。ロシアやメキシコの通貨は利上げを反映して堅調に推移しています。一方アジア諸国でもインフレに直面する国はあるも、景気の一段の減速を嫌って金融緩和を維持、通貨安の原因にもなっています。

ますますアジア通貨が売られる?

今後アメリカ連邦理事会(FRB)がコロナ渦で膨張をした金融緩和措置を正常化して、アメリカの金利が上昇に行くことで、さらにアジア通貨に売り圧力が出てしまう可能性が高くなります。ドル建て債務の負担増や資本の流出懸念に直面して「各国経済がどこまで耐えられるのか、中銀が難しいかじを迫られる」と第一生命経済研究所の西浜氏。経済回復の追いつかない中での苦肉の利上げに追い込まれる可能性もあります。

1990年代にタイや韓国などで通貨危機が起こりました。今回はその再来も懸念されます。市場関係者の多くは「当時と比較してアジア各国の外貨準備は手厚くなっているので、通貨危機の時のようにはならないのではないか」との予測が基本線となっています。

コロナ渦の長期化

ただコロナ渦の長期化でアジア各国の経済構造も変化しています。経常黒字が安定的に続いていたタイは観光収入が激減して経常赤字にも転落しています。「アジアの核となっていく国だけに経済活動の低迷でサプライチェーンへの影響に懸念材料が出てきている」と西浜氏。

先進国と比較してアジアの新興国の経済回復には時間がかかるだろうとみられています。通貨安は一過性のものではないという予測も出てきています。

参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0321T0T00C21A8000000/

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