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ユーロがドルと円に比較して徐々に減速傾向に

はじめに

ユーロが失速をしています。ドル・ユーロ・円の世界の3つの基軸通貨でみていくと、対ドルで年初来安値圏に沈んでいます。夏場以降も対円でも下落基調が鮮明になっています。新型コロナウイルスの感染再拡大や中国の規制の強化などで世界経済の先行きに不透明感が出てきています。そこからリスク回避の通貨に買いが入ってドルや円が相対的に上昇しています。コロナ後の景気の回復は欧米が先行・日本やアジア・オセアニアは遅れています。主要通貨ではユーロの1人負け傾向が際立っています。

ユーロの失速

ユーロは2020年春のコロナショック以降に巨額の貿易黒字を背景にした早期の景気回復の期待感から対ドルや円に比べて右肩上がりの状態を続けていました。ただ潮目が変化したのが21年に入ってFRB(米連邦準備理事会)に量的緩和の縮小(テーパリング)の開始で、対ドルに対して下落基調に入りました。

日本も緊急事態宣言から抜け出せず

コロナ渦が続く日本は緊急事態宣言から抜け出せずに、円安・ユーロ高基調に変化が起こりませんでした。コロナ後の景気回復の順番でドル・ユーロ・円の順に通貨の序列もなりました。ただここにきてユーロがドルだけでなく円に対しても下落基調に変わってきています。背景には世界経済への先行きへの不安です。

欧米の株価指数は最高値を更新も

夏場までは欧米の株価指数が相次いで最高値を更新しました。市場はコロナ後の急速な経済回復への期待を示す数値が続々と出てきました。ところが感染力の強いインドデルタ株が世界中でまん延、さらに中国の規制強化などがあって期待感が急速に減少してきています。

主要の3通貨で見ていくと、経済状態の大きく異なる複数の国で構成されているユーロは景気の回復局面では期待感から上昇傾向になるも、逆に市場がリスク回避の局面に入ると、ユーロ圏の財務基盤の弱い国への不安が出てくるので真っ先に売られてしまう傾向があります。

早期のテーパリングでますます景気の原則も

FRBがさらなるテーパリングを行うことで景気回復の勢いがさらに減少することも予想されます。さらなるリスク回避の動きも出てきそうです。JPモルガン・チェース銀行の佐々木氏は「昨年までは景気回復の期待からユーロや資源国通貨に向かっていたマネーがリスク回避傾向を示すドルと円に戻ってきている」と懸念を示しています。

市場では昨年までの「FRBのーパリングに合わせて、欧州中央銀行(ECB)もコロナ対応の金融緩和策である資産購入特別枠(PEPP)の購入のベースを落とすことも可能」との見方も上がっていました。ところが現時点では「景気の回復に不透明感が出てきているので、ECBも9月上旬の理事会も基本は静観という形になりそうだ」とみずほ銀行の唐鎌氏は見ています。

IMFのユーロの世界経済見通しは明るいも

国際通貨基金(IMF)が7月上旬に示した世界経済の見通しでは、21年のユーロ圏の実質の経済成長率は4.6%と日本の2.8%を大きく上回っています。ただ市場が景気回復に不安を抱くと、一気に投資マネーはドルはおろか円にも向かう可能性が高くなります。そうなるとユーロ圏の景気回復は怪しいものになってきそうです。

ユーロのドル・円に対しての静かな失速は市場に「コロナショック後の世界経済の回復が踊り場状態に入った」ことを映し出しているという見方もできます。

参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB242OS0U1A820C2000000/

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