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世界経済は軟着陸できるか(The Economist) The Economist

わずか1年前、世界中のエコノミストは景気後退(リセッション)から経済が急回復したと喜んでいた。それが今、次の停滞局面が迫っているのではないかと懸念を募らせている。米国では、米連邦準備理事会(FRB)が高インフレと闘うために急速な利上げと保有資産の圧縮を実施する構えを示す。

中国での新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大は世界経済の不透明要因だ(3月、上海)=ロイター

中国での新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大は世界経済の不透明要因だ(3月、上海)=ロイター

欧州では、エネルギー価格の上昇が消費者の購買力を奪い、工場の操業コストを引き上げている。さらに中国では、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染が急速に拡大し、パンデミック(世界的な大流行)が始まって以来で最も厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されている。

世界経済の成長にとって悪材料が重なり、先行きは暗くなっている。複数の国が景気後退局面入りする事態すら考えられる。ただ、どんな困難に直面するかによってそのタイミングは異なる。

過熱する米国経済

米国経済は過熱している。2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.9%上昇し、3月の平均時給も同5.6%上昇した。求人件数は失業者数の2倍近くに及び、70年ぶりの高水準に達している。

FRB当局者は2021年中ほぼずっと、パンデミック後に職を離れた米国人が復帰して過熱する労働市場を冷やしてほしいと願い続けた。その願いは、この半年でかなえられた。労働市場から離れていた働き盛りの労働者は、半数以上が職場に復帰した。だが、賃金上昇率は依然高まっている。物価上昇で生活水準が下がる中で、労働者が雇用条件の引き上げを求めて懸命に交渉しているからだろう。

FRBがインフレ率を目標の2%に抑えるには、賃金上昇とインフレの両方を封じ込める必要がある。短期金利は年初に0.25%を下回っていたが、FRBは短期金利の誘導目標であるフェデラルファンド(FF)金利を12月までに2.5%を超える水準に引き上げ、23年も3%を超えるまで利上げを続けるとみられる。

FRBの今後の利上げペースも大きな注目点だ=ロイター

FRBの今後の利上げペースも大きな注目点だ=ロイター

8.5兆ドル(約1050兆円)まで膨らんだ保有する債券などの資産の圧縮計画についても、5月から縮小を開始し、前回の量的引き締め(QT)を大幅に上回るスピードで進めると明らかにした。

金融政策のブレーキを踏むことは必要だが、他方で成長を脅かす。歴史を振り返れば、FRBが経済を最終的にリセッション入りさせずに労働市場の過熱を抑えることは難しいことが分かる。

1945年以降でリセッションに陥らずに「ソフトランディング(軟着陸)」に成功したのは3回だけだ。しかも、高インフレと闘いながら成功したことは一度もない。債券投資家は2年のうちに景気が悪化し、FRBが再び利下げを迫られるとの見立てをしている。歴史が示すように、向こう2年以内にリセッション入りする可能性が高い。

欧州ではエネルギー供給が不安に

欧州にもインフレの問題はあるが、その原因は今のところ、経済の過熱よりエネルギーや食品の輸入価格の高騰にある。ロシアのウクライナ侵攻や西側諸国の対ロ制裁を受け、欧州へのエネルギー供給は脅威にさらされている。来冬のガス価格は米国の5倍に相当し、家計のエネルギー支出は国内総生産(GDP)比で米国の2倍近い(欧州の経済規模が米国を下回るためでもある)。

エネルギー価格の急騰に伴い、消費者心理は冷え込んでいる。企業も苦戦し、フランスの2月の鉱工業生産指数は低下した。

それでも、ユーロ圏全体の経済は22年に拡大するだろう。だが、その足取りは弱々しく映る。欧州がロシア産天然ガスの輸入停止を決めるにせよ、ロシアが供給停止を決めるにせよ、ロシアからのガス輸入がストップすれば、欧州はリセッション入りする可能性が高まる。

中国ではオミクロン型が感染爆発

世界の経済成長に対する脅威の中で最も深刻かつ差し迫っているのは、中国でのオミクロン型の感染爆発だ。中国が4月6日に発表した新規感染者の数は2万人を超えた。政府がゼロコロナ政策に全力を挙げる中で、人口2600万人の上海だけでなく、感染が爆発している他の大都市でもロックダウンが実施されている。

米ゴールドマン・サックスは、ロックダウンとGDPの過去の相関関係が成立すると仮定すると、中国の一定期間の生産高は行動制限が実施されていない場合を7.1%下回ると試算している。世界貿易にはパンデミック初期の影響が今も残り、ロックダウンがさらなる混乱を招く。今では上海港でも、数百隻の船舶が荷降ろしや荷積みを待ち、沖合で停泊している。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はロックダウンに伴う代償を軽減するよう当局に求めている。だが、経済活動を性急に再開すれば、中国本土は香港が最近経験したような感染者と死者の急増に見舞われるだろう。そうなれば消費者が萎縮し、自国経済が混乱する種になりかねない。

中国が最も効果の高いワクチンの高齢者接種を十分に進めない限り、ロックダウンの可能性が中国経済に絶えず付きまとい、世界を不安定にする要因であり続ける。

世界経済が抱える問題の多くは、明らかに政策決定者の責任だ。FRBの仕事は、パーティーが本格的に進む前にパンチボウル(お酒を入れる容器)を取り上げることのはずだ。だが、FRBは経済が過熱していくのを阻止しようとはしなかった。欧州の各国政府は、欧州がロシア産天然ガスに依存していくのを黙認した。

中国がオミクロン型の感染拡大に苦慮することは予測可能であり、実際に広く予測されていた。経済的な問題は往々にして、予期せずに生じる。それでも、リセッションの影におびえる今日の事態は回避できたはずだ。

(c) 2022 The Economist Newspaper Limited. April 9, 2022 All rights reserved.

出典:日本経済新聞

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