世界の二極化、アジアの成長率3.3%下押しも IMF
シンガポール=中野貴司】国際通貨基金(IMF)は28日に発表したリポートで、西側諸国と中国、ロシアなどとの経済の二極化が一段と進めば、アジア太平洋地域の経済成長率が3.3%失われる可能性があると指摘した。韓国やベトナムなど両陣営との貿易関係が深い国はより影響が大きいとして、世界の分断の進展に警鐘を鳴らした。
米バイデン政権が半導体の先端技術を巡って中国への輸出規制を拡大し、ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー分野でもロシアへの依存を減らすなど、世界で二極化の動きは加速している。
IMFはハイテクやエネルギー分野でこうした二極化が進むと、世界の損失は国内総生産(GDP)の1.2%、アジア太平洋地域ではGDPの1.5%に及ぶと分析した。さらに二極化の範囲が広がり、冷戦期並みの非関税障壁が導入されれば、損失は世界でGDPの1.5%分、アジア太平洋地域では3.3%分に拡大すると試算した。
IMFは10月の最新の経済見通しで、2022、23年のアジアの実質成長率予測を4%、4.3%と7月時点からそれぞれ0.2ポイント引き下げた。
28日にシンガポールで会見したアジア太平洋局長のクリシュナ・スリニバーサン氏は23年の成長率を4.4%に下方修正した中国経済について「23年にゼロコロナ政策が徐々に解除されるシナリオを基本としている。共産党大会が終わり、不動産分野などへの政策対応に関心が払われるとの期待もある」と述べた。
日本については「物価上昇率は高まってきているが、賃金上昇の動きは鈍く、現在の金融政策を支持している」と言及した。
出典:日本経済新聞