大手銀行がブロックチェーンを活用~新型コロナウイルスの影響を受けてペーパーレス計画に移行
はじめに
新型コロナウイルスの感染が顕著になってきたことを受けて、業界体質の古かった貿易産業も紙中心からペーパーレス計画の方に移行してきています。
三井住友銀行は海外のフィンテック企業と提携して貿易業者の支払いを保証する書類を電子化していきます。また三菱UFJ銀行もシンガポールのコントゥア社・スイスのコムゴ社などと手続きを簡素化する方向でいます。
コロナで貿易取引の収縮が懸念される中で事務作業を効率化して貿易を下支えしていきます。
貿易金融とは
貿易金融とは貿易を円滑にするための金融取引のことをいいます。商品の発送から代金を回収するまでにはタイムラグがあります。その間の資金繰りを支えていくとともに、輸入業者の信用を保証していく役割を担います。
世界的な貿易ネットワークの拡大を背景に貿易金融市場は拡大を続けてきています。貿易金融で金融機関が得る金利収入や手数料などの収益は2019年に起こった米中貿易摩擦の激化があったにもかかわらず、世界全体で18年比に換算しても1%伸びています。
コロナの影は残る
ただコロナの影響は確実に残っています。各国が食品や医療品を輸出の制限の対象に加えたことが大きな影響として出てきています。新興国の信用不安も輸出入の停滞をさらに進めてしまいます。
貿易業はまだ紙が中心
ICCの調査によると、船荷証券などをペーパレスにしているところは4社に1社弱にとどまっています。コロナの影響で社員の出勤を制限しているところも多く事務作業の面で苦戦をしているところも少なくありません。
貿易業界はただでなくても紙文化が強いです。輸入業者の支払いを保証していく「信用状」などの重要な書類は紙媒体でのやり取りが基本になります。信用状などを扱う場合は輸入業者が金融機関に発行を依頼してから相手国への金融機関を経て輸出業者に届くまでのやりとりは原則紙ベースとなっています。
電子化にすることで
コントゥア社・コムゴ社ともブロックチェーンの技術を使って貿易金融の電子化に取り組んでいきます。コントゥア社は主に新興国向けの貿易で信用状を使う取引に強みを持っています。
もし日本企業がシンガポールの輸入企業に工業製品を輸入する場合は、この2社と互いのメインバンクの4社でブロックチェーンのシステムを共有します。ブロックチェーン上で輸入業者の支払いが保証されていることを確認できるので紙の手続きに比べ大幅に業務を効率化できます。
三井住友銀行・東京UFJ銀行だけでなく、みずほ銀行・フランスのBNPパリバ・SBCホールディングスなどの海外の金融機関も行っています。
貿易取引とブロックチェーンの関係性は高い
貿易金融とブロックチェーンの親和性は高いです。「誰がいつ、どんな情報を書き込んだか」という記録をしていくブロックチェーンの技術は大量の書類が行き交わる貿易の取引には大きなメリットがあります。
輸出入の分野は世界のGDPの半数近くを占めます。コロナの影響で海外取引があまり機能をしていません。この期間が長期続くと世界経済は加速度的に減少をしていきます。貿易取引を支えておく金融機関の決断が重要になります。
出典:日本経済新聞