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債権現金化の申請が3割増・中小企業資金繰りの苦境が一段と深刻に!

はじめに

中小企業の資金繰りがさらに厳しくなっています。長引くコロナ渦で赤字に転落する企業が多くなってきました。そこで売掛債権を現金化して手元上の資金を確保していく動きが強まっています。また債務不履行の懸念から売掛金を保証するサービスの手数料も高めになってきています。収入回復の見通しもはっきりとせずに飲食業を中心に借り入れの余力は徐々に小さくなっています。渋谷区の某店では1月の売り上げは12月の3割ととても厳しい状況となっています。

コロナの影響を受けている業界ほど深刻

法人企業統計によるとコロナの影響を直接受けている中小企業ほど財務状況が悪くなっています。資本金が1000万円台の企業の利益剰余金は60兆円から50兆円に減っています。利益剰余金の減少は赤字に増える企業が増えたことを意味しています。

また増益の悪化とともに資金繰りの厳しさも増しています。一つには代金回収が済んでいない売掛債権を割引いて売却して早期に現金化する企業が多くなっています。ファクタリング会社のオルタ社では1月のファクタリングの申し込みが前年同期比よりも10%ほど増えています。2月は上旬の10日時点で30%程度の増加となっています。その中で建設業と製造業で全体の半分程度の申し込みとなっています。

売掛金の保証料率が上昇

また売掛金を回収できないのではないかという想定をしている企業もあります。第三者に保証料を払ってもらう依頼も多くなっています。売掛債権保証のイー・ギャランティ社で2020年12月の新規契約の平均保証料率は2.77%と新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年12月と比較して1.15ポイントも上昇しています。

債権の保証料率は取引先の倒産や支払い遅延の懸念を反映しています。これを「不安指数」として企業間の信用を映しています。その指数が今回は09年のリーマンショック時につけた3.3%という数値に近づく高い水準となっています。20年12月の企業からの問い合わせの件数は前回の緊急事態宣言時の20年4月から4割も増えています。保証料率はさらに上昇する可能性があります。

政府が企業の資金繰りを支えるも

政府も2020年春以降に数十億円の予算を投じて企業の資金繰りを支えています。広く分厚い安全網で今までの危機は何度も乗り越えてきました。東京商工リサーチの調べでは20年の倒産件数は19年から7%減の7773件とバブル期に匹敵する低水準に抑えています。

企業にもあまり余力はない

ただ企業はすでに多くの額を借り入れているところも多く余力はあまりありません。日本フードサービス協会によると加盟する外食59社の短期借入金は2020年10月時点で3656億円と半年間で4.5倍以上にも膨れ上がりました。短期借入金は1年以内の返済が義務付けられています。ただこの短期借入金は平時であれば長期融資へのすり替えで長期間の返済で乗り切ることが多くなっています。ただコロナの収束が読めない状況で金融機関の貸し出しも慎重になっています。

ある都心の老舗の飲食店も持続化給付金と都の助成金で300万円を受け取ってさらに金融機関から数千万円を借り入れるも年明けを境に客足がパタリと止まりました。22年春から返済が始まるもそこまでにコロナが収まるのか。収まらないと返済は難しいという嘆きもあります。

経済がほとんど回復しない

帝国データバンクの赤間部長は融資のピークは2020年の6月。ただ経済市況がほとんど回復していない。まもなく資金の尽きる企業がどんどんと出てくるのではないかと指摘しています。中古の調理設備を取り扱うテンポスバスターズでは1月の買い取り件数が20年12月と比較しておよそ1割ほど増えています。借り入れや1日最大6万円の協力金では足らないという店も何とか損失を穴埋めしています。

その中でも無利子・無担保融資というのが効いている

上場している地方銀行の2020年4月から12月期の決算では78行のグループの貸し倒れに備える引当金の計上や不良債権の処理の与信費用が合計1992億円となっています。コロナ渦が深刻な中でも前年同期比の10%で済んでいます。これはやはり持続化給付金や民間の金融機関の無担保・無利子の支援政策が効いているという形になっています。

今後は楽観できない

ただ今後は全く予断を許しません。支援開始からすでに1年近くが経っています。今後は融資などの返済期限を迎えてしまうケースが極めて高くなります。ある大手銀行幹部は返せる見込みの少ない企業にはやはり貸せないという話をしています。すでに借り入れを膨らませている企業に追加融資をすれば不良債権の懸念が増します。中小企業の苦境が長引くことで国内の景気にも影響が及んできます。状況はさらに深刻になってしまいます。

参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ275ST0X20C21A1000000/

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