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法人税率の下限を最低でも15%に・東南アジアの日系企業にも影響も

はじめに

G7・主要7か国が法人税の最低税率を「少なくとも15%」と明記した共同声明を採択したことを受けて、国際税務の専門家などの間に日本企業への影響を見越した指摘が出始めています。東南アジアなどに進出する製造業には現地国からの税制の優遇を受けている国もあります。これが税負担の増加につながっていく可能性が考えられます。今後新興国を含めての国際ルールの詰めの協議が進んでいく中で詳細な制度の設計が注目されています。

税制優遇が問題になりそう?

アジア圏に在住する税務の専門家によると、タイやベトナムなどの東南アジアに進出している日本企業は「法人税の負担が極めて低く設定されるなどの税制の優遇措置を受けているケースがけっこうある」という指摘がなされています。受け入れる国としては、企業誘致や雇用の創出などの効果を見込める上に、企業側にもコスト面でのメリットとなっています。「日本企業で実際に課せられている税率が15%以下の企業もある」とのことです。

今までに議論されてきた経済協力開発機構(OECD)の案などでは、裁定税率の扱いを「新興国に工場を建設して現地の従業員を雇用するなどの一定の条件を満たす」ことで企業側を有利にする措置も検討されてきました。ただ今回の合意の土台となっているアメリカ案では優遇税制分の取り扱いが不明といえます。「優遇税制分も含めた最終的な率で一律に線引きされるのではないか」(国際税務に詳しい税理士)という見方も浮上してきています。

仮に優遇税制分を含めて「最低でも15%」というラインになった場合に、最低ラインに満たない分は本国で追加課税されるという可能性も考えられます。「東南アジアなどに進出している製造業などに対して税の負担増となる影響が出るかもしれない」と言われています(EY税理士法人の角田会長)。

事務負担の増加も懸念

企業側にとっては事務負担の増加につながる可能性もあります。日本の税制には法人税の低い国にある海外の子会社などに所得を移して節税をするのを防ぐ「タックスヘブン対策税制」というものがあります。もともと税務処理が複雑なので企業側のミスも多くなります。ここに最低税率の国際ルール化が追加されてしまうと、企業は国内外で似たような複雑な制度に同時に対応することになってしまいます。「最低税率のルールが導入された際には、日本のタックスヘイブン対策税制も簡素化してほしい」(製造業の税務担当者)という意見も出てきています。

今回G7の財務相の会合で話し合われたテーマはOECDを中心に議論されてきている「経済のデジタル化に伴う新たな税制」にまつわるものといえます。これまでにもOECDやアメリカなどが具体案を示して、主にイ:法人税についての国際的な共通の最低税率の設定、ロ:利益率の高い多国籍企業に対して、課税権の一部を市場国に分担する「デジタル課税」という2本立ての構図で各国の協議が進んでいます。

今後は?

G7が基本的な方向性で合意をしているとはいえ、詳細な制度設計はこれからといえます。今後アイルランドなどの低い税率の国やインドなどの巨大市場を持つ新興国などに同意を得ることができるのか。これらも含めて実効性のある仕組みを作る必要がありそうです。ただそこには多くの紆余曲折が予想されます。

参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0747P0X00C21A6000000/

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