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企業が損失リスク積極を開示させていく方向で調整

はじめに


企業が将来の損失につながる情報を積極的に開示する動きが広がっています。トヨタ自動車や住友商事などは見積もりが入るのれんや引当金について、経営者の判断内容などを監査報告書に記載していきます。新型コロナウイルスで業績に不透明感が出る中で、21年からはすべての上場企業で開示が義務化されます。投資家がリスクを見定める材料にもなるところから企業にも適切な協力義務が求められます。

監査の開示のあった企業


監査の開示のあった企業は、住友商事・三菱ケミカル・ソニー・第一生命ホールディングス・三菱UFJ銀行・トヨタ自動車・ソフトバンクなどが行っています。

住友商事は、鉱山開発のコストなどの問題で、2020年度4-6月期には550億円程度の減収をする可能性があるという計上を担当するあずさ監査法人が発表しました。「かなりの不確実性を伴う」という記載がありました。もともと生産性が不安定な上に、新型コロナの影響で操業停止という期間も長くあって、1-3月期の末に減損のチェックをしていたことも記されていました。経営者であればこの記載はできなかったので、投資家のリスク管理はしやすくなりました。

監査報告書(KAM)の明確化

企業の決算書類の確かさを保証する監査報告書が付いています。今までは「適正」なのか「不適正」というものを短く記すだけでしたが、21年1-3月期からは監査時に注意をした重要な検討事項と対応を記すことが義務化されます。これを英語では「KAM」と呼ばれています。

KAMは外部から過程がわからない監査の「ブラックボックス」の透明化につながるのではないかと考えています。英国で13年・米国で19年から適用が始まっています。日本も東芝などの不正会計を受けて監査の信頼を高めていく方向で実用化が進んでいます。

コロナ問題で苦しむ企業も開示する企業も

業績への影響が大きい新型コロナについても、KAMで具体的に開示する企業がでてきています。紳士服のAOKIはファッション事業の固定資産価値の見積もりの前提を示しています。新型コロナウイルスの収束時期を想定して、減損の潜在的影響額と発生可能性が「高」と3段階で最上位に引き上げていきます。

ただ日本でも海外でも不正監査の問題はなかなかなくなりません。監査が「適正」といっても倒産をしてしまう企業が多くなります。KAMはこのような監査にも一石を投じることができるのではないかと考えています。

まだ本格的には進んでいない

KAMを利用している企業は上場企業の中でも50社程度にとどまっています。残り4000社程度ある上場企業をどこまで加入させるかは来年に向けての課題になります。

KAMの算定基準は監査人と協議をしながら決めていきます。将来性の見積もりなど企業の判断が入るものが中心になっていきます。先行企業では工場など固定資産・のれんの評価・繰り延べ税金・資産の回収可能性・貸倒引当金の算定などが対象になります。

企業に内在するリスクを隠すのではなく、多くの企業で「経営のトップ主導で事業リスクを把握して、それを対処することも含めて適切に開示する仕組みづくり」を行うことができれば日本企業がさらなる信用を得るのではないか。そこから業績の回復・さらなる上昇も期待できるのではないかと考えられます。

出典:日本経済新聞

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