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新型コロナウイルス感染症による売上蒸発環境下における経済的リスクの評価

はじめに

2019年末に中国湖北省武漢市で発生をした新型コロナウイルスは中国を発端にほぼ世界中の国と地域に拡大しました。日本でも感染が拡大して感染者数・死者数が毎日のように伸びています。政府はこれらの状況を鑑みて20年春と21年初の2度にわたって緊急事態宣言を出しました。各都道府県は緊急事態宣言の対応として様々な施設の休業などの自粛を行って経済活動の制限を行っています。

休業や自粛をが行われたことで多くの企業で売り上げの蒸発が明らかになってきています。売上蒸発とは様々な業種での需要及び需要の機会がなくなることで売り上げを生むことができないという状況のことを指します。この売上蒸発で日本のGDPはどれだけ失われるか。また倒産のリスクはどれだけ上がるのか。売上高の減少と現金の預貯金高さらに持続化の給付金に絞ったGDPの減少額と倒産の危険企業さらには失業者の推計を行いました。

ポイント

このデータのポイントは以下の3つになります。

1:企業のデータを活用したGDP推計の方法を応用。売上蒸発環境下でのGDP減少額の推計学を行った。
2:売上高・売上原価・現預金及び助成金を用いて倒産危険企業を定義していきます。売上蒸発の環境下での倒産危険企業数の推計を行う。
3:売上高の減少額・助成金の金額・期間といった要素を用いたシナリオの設定を行うことで想定される状況に応じてのリスクの評価を行う。

ネオGDPの推計

GDPは生産・分配・支出の3つが等価になることが知られています。ネオGDPは生産に着目していきます。ネオGDPは以下の式で算出します。これは企業の売上から売上原価を引いた金額をすべての企業について合計していきます。

内閣府が発表した国民の経済計算では名目のGDPは増加傾向で2018年時点で547兆円ほどです。一方帝国データバンクのビックデータを用いて算出されたネオGDPは500兆円ほどと推計されます。この差額47兆円はGDPの算出で行われる中間投入額の減算や純輸出額の加算さらには住宅賃料の帰属計算といった様々な推計が省略されているということに起因しています。また金融保険業や公務を除く企業は分析の対象から除外をしています。以降はこのネオGDPを中心にした分析をしていきます。

500兆円といわれた2018年のネオGDP。これを月単位で換算すると1か月で41.6兆円ほどになります。この41.6兆円はどのように失われるのか。新型コロナウイルスの影響で売り上げを伸ばしている企業・下げている企業など様々な状況が考えられます。ただこれはその平均的な値を持って算出します。また本来は売上原価には変動費が含まれるため、売上高の変化に応じて変動することになりますが、これも原価は固定して話を進めます。

それによると、すべての企業で売上が10%蒸発するとネオGDPが11.8兆円減少します。また売上が半減すると9割近い37.7兆円のネオGDPを失います。90%近くの減少でネオGDPはほぼ0になります。コロナウイルスによる影響で日本のGDPを大きく減少させるということになります。

売上蒸発と企業の倒産

売上蒸発は企業の倒産にも影響が出ます。2020年も倒産企業は多く出ました。企業は売上が減ってもそれなりのコストが発生します。特に支払いが多くなります。この支払いができなくなって倒産をせざるを得ない企業が多くなります。売上原価を企業が支払うべき金額の総量と仮定します。また企業は給付金以外の資金獲得手段を持たないと仮定します。この場合に倒産リスクがどのようになるかを見ていきます。売上原価が売上高を上回った企業を倒産危険企業としていきます。

この図は1か月間の売上減少があった時に日本企業の何社程度が倒産するかを予測しています。青が企業の預金のみを考慮した場合、グレーは行政からの持続化給付金が月に200万円程度出る場合のケースです。たとえば売上が半減した場合には預金だけだと1800社程度が1か月で倒産する危険が出てくるということです。これに持続化給付金が加わるとその数は240社程度にまで減少するということです。これを見ると多くの企業は給付金があることで1か月程度は倒産の危険を避けることができることが分かってきました。

この図は売上半減状態の継続月数と倒産危険企業の件数を示したものです。同様に青が預金のみの場合、グレーは持続化給付金を加えた場合のケースになります。

預金のみの場合は半年程度で数万社・10か月で20万社を超えます。さらに11か月では60万社を超える企業が倒産危険の状態になります。月200万の持続化給付金を得られる場合では数か月程度は倒産危険の企業を抑えることはできそうです。ただ9か月前後になると10万社を超える企業が倒産の危険に瀕します。また12か月・1年経つと40万社近い企業が倒産の危険企業の候補に入ってきます。こうしてみると売上の蒸発の長期継続は企業倒産を助長することになります。

地域的な傾向

 

倒産の地域傾向はどのような状況なのか?まずは全国の倒産危険企業数の推移を見ていきます。これを見ると東京や大阪などの都市部を中心に倒産危険の企業が増えます。さらに時間を追うごとに倒産の危険が全国に広がっていきます。やはり首都圏に企業が多いということが明らかになります。

次は15か月時点の倒産危険の割合の高い30の自治体について比較しています。企業数100以下に満たない場合は除いています。企業数の多くない自治体でも倒産危険企業の割合が高い自治体もあります。中には60%近い企業が倒産するかもしれないというデータも出ています。

経済再開のシナリオ

経済の再開と北半球・南半球に分けた気候に関連しての二次・三次感染も懸念されています。このような状況も踏まえて3つのシナリオを用意しました。政府による緊急事態宣言での自粛要請をどこまでにするか。またその後の経済の戻り方を3つのシミュレーションに分けました。

1:1か月の自粛と売上蒸発が毎月半減するケース:売上の減少率が月ごとに50%・25%・12.5%・6.25%・3.125%・1.5675%・・・と半分ずつに改善される。
2:3か月の自粛と売上蒸発が毎月半減するケース:売上の減少率が月ごとに50%・50%・50%・25%・12.5%・6.25%・3.125%・1.5675%・・・・と4か月目から半分ずつに改善される
3:6か月に1か月の自粛で売上蒸発が半減するケース:売上の減少率が月ごとに50%・25%・12.5%・6.25%・3.125%・1.5675%・50%・25%・・・のサイクルで進む。

この図ではシナリオ1が濃い青・シナリオ2がグレー・シナリオ3が青に分かれています。これを見ると自粛をして売り上げが半減すると倒産危険件数が激増することが分かります。シナリオ1では2か月で1500社程度まで急増するもそこからはだいぶ落ち着きます。シナリオ2では自粛期間の3か月までに一気に5000社程度まで増加します。ただその後はほぼ横ばいで推移します。シナリオ3では半年ごとの節目で一気に倒産危険企業が増えます。ここから売上が40%から50%落ちると倒産の危険が一気に大きくなること。また売上の減少率が減ってくると倒産の危険が小さくなること、売上の減少率が半分程度になると何とか耐えられる企業が大半になってくるということも分かってきました。

3つのシナリオと失業者数の関係

この図は上記の3つのシナリオと失業危険者数の関係を示しています。基本的には倒産危険が起こる時点で失業危険者数が急増します。なおこの人数は正社員の方を対象としています。サービス業などではパートなどの労働者も多いので実際にはさらに多くの失業者数になることが予想されます。図からみると1000社が倒産危険に及ぶとおおよそ10万人程度の失業危険者が出ることが予想されます。シナリオ2のケースだと最初の3か月で40万人程度もの失業危険者数になります。実際にはここにパートなどの非正規労働者の方が加わるので実際にはさらに多くの方が失業の危険に遭うことになります。その他役員などの経営者も別途なのでそのような方も仕事を失う可能性が出てきます。膨大な数の方が失業する可能性があります。そこから住宅ローン問題・破産・夜逃げ・自殺などの様々な社会問題につながります。

感染防止策と企業支援策の両立が求められるか

新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の抑制で生じる売上の蒸発は様々な点で経済活動に影響します。前述のように経済の低迷は様々な社会問題を引き起こします。経済をいつ正常に近い状態で再開させるのか・感染対策をどうするのか・ワクチンはできるのかなどの様々なケースを考えていく必要があります。医療と経済という2つの問題を効率的に考えて国全体のダメージを小さくしていくか。また自粛による企業の支援策をどうしていくかなど問題は山積みといえます。今後もこのようなデータを深堀りしていきたいと考えています。

参考資料・出典
帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/bigdata/covid19/index.html

 

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