ベトナム経済は4~6月期で6.61%成長
はじめに
ベトナムで新型コロナウイルスの流行が再燃する中で経済の回復も続いています。ベトナムの統計総局が29日に発表をした4月から6月期の実質の国内総生産(GDP)は前年同期比6.61%でした。4月下旬から変異ウイルスで流行して行動制限を強化していたものの、対アメリカへの輸出が年初から前年同期比で4割強増えていることが成長を促進させています。
四半期で3%程度の成長を達成
ベトナムは20年に四半期のベースでマイナス成長で落ち込まずに通年で2.91%の成長を達成しています。1月から3月期は4.65%増になっていて回復が続いています。「行動制限の影響が出るも、輸出なども伸びていてコロナ渦でも堅調な伸びを示しています。(みずほリサーチテクノロジーズ・松浦氏)
ベトナム北部最大の港湾を持つハイフォン市で5月中旬にラックフェン国際港で2カ所の新ターミナルの建設が始まりました。総工費はおよそ7兆ドン(330億円)で既存のターミナルでは大型のコンテナ船に電子部品や衣服などの荷物が積まれていきます。1月から3月期には同港などを利用した総貨物量は前年同期比で14%ほど増えて712万トンになっています。高い伸びが今後も見込めるとして拡張も検討されています。
米国向けの輸出が堅調
成長エンジンになっているのがアメリカ向けの輸出です。対アメリカの輸出は1月から6月期に前年同期比で43%ほど増えています。輸出全体を1570億ドル(28%増の1兆7千億円)に押し上げています。19年1月6月期の輸出全体の実績は1220億ドルで21年の1月6月期の実績はコロナ前を大きく上回っています。ベトナムの総輸出額のおよそ20%を占める韓国サムスン電子はスマートフォンの輸出が相変わらず堅調になっています。
米中貿易戦争の特需?
人件費が比較的安いベトナムではこれまでも中国の生産拠点の代替となる「チャイナプラス1」の筆頭です。18年に始まった米中貿易戦争で、米国が中国製品に課す制裁関税を避けるため、中国以外の国に生産拠点を置く動きを加速化させています。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は21年にベトナムに7億ドルを追加投資する計画となっています。同社のベトナムでの年売上高は60億ドル程度ですが、今後3年から5年のうちで400億ドル程度に引き上げたいという考えがあります。
コロナの封じ込めは苦戦
ただ新型コロナウイルスの封じ込めには苦戦をしています。ベトナムの人口はおよそ1億人ほど。類型の感染者数は1万6000人ほど。厳格な防疫が功を奏して、コロナ対策の優等生とも言われていました。ただ4月下旬ごろからの変異ウイルスの流行で4月下旬からのおよそ2か月で1万3000人もの感染者を出しています。北部のバクザン省などの工業地帯の感染は収まってきているものの、南部の最大の都市のホーチミンでは市中感染が止まらない感じになってきています。そこで6月20日からバスやタクシーの運行が停止、レストランやカフェなどの店内での飲食も禁止、不要不急の外出自粛も求められています。4月から6月の個人消費などの最終消費支出も前年同期比で3.2%増にとどまりそうです。
ワクチンの調達が遅れる
ベトナム経済にとっての最大の難点はコロナワクチンの調達が遅れていることです。1回以上のワクチン接種を行った国民もまだ3%超にとどまっています。期待されている国内ワクチンの本格的な生産開始にはまだ時間がかかりそうです。政府は人口の75%程度にあたる7500万人の年内の接種完了を目指すも実現は困難になっています。
GDP7%近い成長予想も
アジア開発銀行(ADB)が4月に公表をした21年のGDPの成長率の見通しでは、ベトナムは6.7%の成長が見込まれています。東南アジアの主要6カ国で最も高い成長率になる見通しになっています。ただワクチンの接種が遅れることで、国内での経済活動の本格的な再開には時間がかかりそうです。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM249HN0U1A620C2000000/