世界の航空は日米で回復に差が出る
はじめに
世界の航空会社で業績の回復力に差が出てきています。日本航空やANAホールディングスの2021年4月から6月期の業績は赤字が続く一方で、デルタ航空やアメリカン航空などのアメリカの航空大手が最終的に黒字に転換しています。新型コロナウイルス渦後の世界の航空業界でアメリカの航空会社が有利に立つ可能性があります。
日本航空は今だ赤字
日本航空が8月3日に発表した21年4月から6月期の連結最終決算(国際会計基準)は579億円の赤字になりました。堅調な貨物輸送やコストの削減で前年からの赤字は縮小するも、旅客数は新型コロナ前の水準には届いていません。
JALの菊山最高財務省責任者は「需要回復の見立ては難しい」としています。21年5月現在でコロナ前と比較した需要が国際線で4割、国内線で8割程度に戻ることができれば本業の黒字化が可能とみていましたが、6月時点で国内線3割、国際線7%にとどまっています。日本勢の需要回復のシナリオが見えてきません。ANAホールディングスが21年4月から6月期の連結の最終損益は511億円の赤字(前年同期は1088億円の赤字)となっています。
欧州も回復は遅れる
欧州勢も回復は遅れています。イギリスのブリティッシュ・エアウエイズを傘下に持つインターナショナルエアラインズグループ(IAG)の21年4月から6月期の連結の最終損益は9億8100万ユーロ(1275億円ほど)の赤字、前年同期は21億2500億ユーロの赤字でコロナ渦の長期化が続きます。
ワクチン接種の進むアメリカでは業績の急回復
ワクチン接種が進んでいるアメリカでは航空大手の業績が急回復してきています。アメリカ航空大手3社の21年4月から6月期の決算は合計の純利益は2億3700万円(260億円)前年同期は前年同期は94億ドルの赤字だったのでかなり持ち直しています。アメリカン航空とデルタ航空の2社で最終の損益が黒字を確保。新型コロナ下に入った2020年1月から3月期以降では初の黒字となりました。ユナイテッド航空は最終赤字だったものの、赤字幅はコロナ下では最も小さくなっています。
このアメリカの航空界を支えたのは国内線の需要です。国際航空運送協会(IATA)では、6月の国内線の旅客規模はアメリカでコロナ前の19年6月に比べて85%まで回復しているも、日本は32%の回復にとどまっています。近距離が多い欧州の国際線の回復も31%と限られています。
アメリカ勢は国内線の占める割合が多くなっています。デルタ航空やアメリカン航空はコロナ前の2019年12月期で旅客収入の7割が国内線で占めています。同じくコロナ前でANAホールディングスやJALの国内線は旅客収入の半分程度になっています。
本格的な回復は22年以降になる見通し
IATAは航空業界からの現金の流出が止まる時期を22年以降と本格的な回復は来年以降にずれ込むという見通しを示しています。変異ウイルスの感染拡大で各国は入国の規制を緩めることができず、国際線の回復が遅れそうです。国内線の比率が高いアメリカの航空大手の有利な時代が続きそうです。
デルタ航空のエド・バスティアンCEOは「回復の流れをつかんで、業界トップの運航を実現していくために投資を行っていく」と述べています。アメリカ系で新機材の導入やサービスの拡充の動きも出てきています。アメリカの航空会社がコロナ後の世界の航空再編などからの主導権を握っていく可能性がありそうです。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC020GV0S1A800C2000000/