2020年は輸出の強さがものをいった
はじめに
2020年10月から12月期は輸出の強さがものをいいました。新型コロナウイルスの感染が世界的に進んでいてサービス業は以前にもまして厳しい時を迎えています。ただ春の時期と違ってモノは動いています。輸出は日本経済を支えている頼みの綱となりそうです。
輸出は前期比で10%以上の伸びに
日銀は財務省の貿易統計と輸出入の物価指数をもとに季節調整をかけた指数を算出することができます。20年12月の実質輸出指数をもとに10・11・12月の3カ月分を単純平均して四半期の指数を計算すると、7月から9月比の12.7%増の112.0と算出。今年2月発表予定の20年10月から12月期の国内総生産の速報値でも輸出の強さがした支えとなりそうです。
ただ2020年12月だけで見ていくと、11月比で1.0%減の112.0と7か月ぶりのマイナスになりました。欧米向けの自動車の輸出で若干の苦戦があって数値が伸びませんでした。自動車は昨春の世界的な経済活動のストップによって抑えつけられた需要や欧州の税制改正に伴う駆け込み需要の一巡が響いた面がありました。
大和総研の神田氏は「情報関連株や資本財などはすそ野が強く輸出は底堅い」と評価。感染が急拡大した冬場もロックダウンした地域を除いては国内外で操業が続いています。同氏は「サービスと輸出のm流れは別物としてみていくべき。モノに対しての需要は経済を下支えすると話しています。
ただ20年5月には輸出指数が85.1にまで落ち込んでリーマンショック時からの回復過程にあった2009年9月以来の数値にまで落ち込みました。ただ夏以降は順調に回復しています。20年11月期は113.2とコロナ渦以前の状態。2018年4月の114.0以来の数字にまで戻ってきています。アメリカ向けの自動車、中国向けの自動車関連や工作機械などの資本財が堅調な伸びを示しました。
ただ輸入と内需は苦戦
ただ需要の強さは国内外でまだ差があります。特に輸入が伸びていません。2020年10月から12月期は前期比6.1%増の100.9と輸出に比較すると伸びが緩やかです。20年12月だけでは11月比0.7%減の101.3と4か月ぶりにマイナスとなりました。
輸入は20年4月から6月期のマスクなどの衛生用品や在宅勤務の広がりによるパソコンなどの需要が伸びたところから一時期は大きく伸びるもそこからの反動が来ています。みずほ証券の永井氏は「内需の伸びは低く、日本の景気回復の遅れが輸入を含めた数値に現れている」と分析。所得の減少を含めた「巣ごもり需要」に依存気味の状態では今後の消費も伸びていかないだろうと見ています。
経済成長率もマイナス予想
21年1月から3月期の経済成長率はサービス消費の落ち込みは不可避です。そこからのマイナスへの転落が予想されています。下支えが堅い輸出は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の戸内氏「伸びはなくてもプラスは維持できる。ただ自動車から資本財に主役が変わるのでは」伊藤忠総研の武田氏「欧州のロックダウンなど景気が減速で苦戦が予想」など意見が分かれています。輸出は今後の経済を占う上で重要なファクターとなりそうです。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD00026_R20C21A1000000/