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コロナ禍における日本の倒産状況

はじめに

日本でのコロナ発生から1年以上経ち、未だ終息の目途もたっていませんが、日本の倒産状況はどうなっているのでしょうか?帝国データバンクの倒産情報をベースに、最新の状況を見てみたいと思います。

2020年の倒産状況

まず2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)1年間の倒産状況ですが、倒産件数は7,314件(前年度8,480件、前年度比13.8%減)と、2000年度に次ぐ過去2番目の低水準となっています。負債総額は1兆2174億6500万円と3年連続で前年度を下回り、2000年度以降で最少を更新しました。

内訳は以下のように

内容を見ると不況型倒産が全体の78.3%、負債5000万円未満の倒産が多く、小規模な倒産が増加しています。これは小売業、サービス業の倒産が多かったことによります。コロナ禍にもかかわらず、倒産件数が極めて少なかったのは資金繰り支援の為の政府金融機関などの実質無子・無担保融資、さらに金融庁がコロナ関連融資の返済猶予対応を金融機関に要請したことや中小企業の事業転換を促す事業再構築補助金などの施策が功を奏したものと思われます。また、多少資金的に余裕のあった企業の中には倒産という手段を取らず、自主廃業した企業も多かったのではないかと推測されます。上場企業の倒産は2020年5月民事再生法(最終的に破産)を申請した東証一部の株式会社レナウンの1社のみです。上場企業の倒産が少なかったのは資金繰りに余裕のある企業が多かったこと、また上場企業向けの金融機関のコミットメントライン契約が急増し、企業の資金繰りを支えたことがあげられます。

個人消費向けの業界が大ダメージ

コロナ関連の倒産という立場から見ると個人消費者向けの業種が大打撃を受けており、百貨店、スーパー、ホームセンター、飲食店を含む「小売業」の中でも飲食店の倒産が多発しています。また、ホテル、旅館、システム・ソフト開発、医療機関、理美容室、映画館、学校、カラオケ、ボウリングなどの娯楽関連を含む「サービス業」の中ではホテル、旅館の倒産が多発しています。取り分け緊急事態宣言が一年で人の動きが最も活発になる時期と重なり、本来であれば行われた卒業式、入学式や入社式、卒業旅行や歓迎会などのイベントが軒並み中止、さらに年末のクリスマス・正月の人出も大幅に減少したことが、大きかったと思われます。

コロナが大きな影響を占める

コロナ関連の倒産で中小・零細企業が多かったことに共通する特徴は、新型コロナが引き金になった倒産が殆どすべてを占めている点です。新型コロナが発生する前から売り上げ減少、取引先への支払い遅延、銀行への返済遅延など厳しい経営環境にあったところにコロナが直撃し、体力のない企業が倒産しています。もともと経営状況が悪かった企業が多かったこともあり、その取引先と取引する企業は事前に回避策を講じたところが多く、また中小企業向け緊急融資や給付金、協力金の支援策もあり、関連倒産が少ないのもコロナ関連倒産の特徴と言えます。

観光業も壊滅的なダメージ

次にコロナ関連で最も打撃を受けた産業である「観光業」についてその倒産の特徴をみて見てみたいと思います。2021年3月末現在ホテル・旅産件数は86件で飲食店の205件、建設・工事の110件に次ぐ多さになっています。観光産業は小泉首相が2003年「観光立国宣言」を出して以来、2006年には「観光立国推進基本法」。2008年には「観光庁」も設立され、国をあげて推進されてきました。また安倍内閣では「地方創生」の一大施策として観光業が位置づけされ、国内外の観光客誘致を推進してきました。取分け訪日外国人は2019年には3188万人まで達しましたが、2020年は新型コロナ蔓延で訪日外国人は前年比87.1%減の411万人と急減しました。

コロナ関連で倒産したホテル・旅館の特徴はまず、オリンピック需要などを見込み大型の投資をしてきた企業が挙げられます。もう一つは旅行形態の変化や国内需要の縮小などの動きについて行けなかった企業で、老舗旅館などがあげられます。三番目はまさに訪日外国人向けに特化した事業を行ってきた企業です。観光業は経済波及効果が大きいだけに、ホテル・旅館の倒産は地域経済に与える影響は大きく、コロナの終息にまだ時間がかかることを考えると、今後資金繰りが続かず事業を諦めるところも出て、倒産は増加するものと思われます。

明るい兆しも

外資系ファンドや不動産会社など体力のある企業が買収などを進め、ホテル・旅館業界も再編されていくものと予測しています。但し、ただし、マイクロツーリズム、オンライン旅行、オーダーメイド型の旅行を推進し、需要喚起を図って事業継続を図っている企業も多くあり、新型コロナが落ち着きを取り戻すにつれ、観光業にも明るい未来が開けてくるでしょう。

まとめ

最後に、直近2021年4月の倒産状況を見ると倒産件数は489件と4月としては過去最少と、いまだ増えていません。業種別で見ると製造業が中国市場の回復など輸出関連の好材料に押されたこともあり、9か月連続で減少していますが、食料品製造業は新型コロナウィルス感染拡大の影響で飲食店向けの業者の倒産が発生し、前年同月比54,5%増(17件)となっているのが特徴です。また不動産業は4カ月連続の増加となっています。

企業の月商に対する借入金の割合が平均5倍と前年4.2倍から拡大していること、新型コロナ感染第4波の到来を勘案すると、今後倒産件数が増加に転じる懸念は高まっています。

以上

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