インターネットによる取引先モニタリング管理サービスについて
一般に企業は取引先の信用リスクを管理するには、定期的に取引先からのヒアリング、決算情報などを入手して財務情報の分析などを行い、不払いリスクがないかどうかチェックします。しかし、取引先の信用リスク情報を常に自社で独自にモニタリングすることは容易ではありません。自社で気づかない信用リスクが発生した場合、場合によってはあっという間に取引先に不払いが発生したり、倒産する可能性もあります。
このような状況に対応するために、いくつかの信用調査会社などが、インターネットによる取引先モニタリング管理サービスを提供しています。取引先の変化を常にチェックすることで、不測の事態が起きる前に取引条件や取引内容の見直しが実施でき、貸し倒れなどによる損害を未然に防ぐことができます。
幾つかの企業の取引先モニタリング管理サービスの概要をみてみたいと思います。
A社の取引先モニタリング管理サービス
A社のサービスは次の4つの情報を知らせてくれます。
(1)サービス内容
倒産予測値
A社の膨大な企業テータベースをもとに、データ解析手法を用いて企業が1年以内に倒産する確率。予測し、数値化したものです。倒産リスクを分かりやすく示した10段階の格付けを毎月提供してくれます。更新があった場合は都度提供してくれます。これにより、取引先の倒産リスクが全体の水準に比べてどのくらい危険であるかを容易に把握できます。登録企業一覧画面により、登録企業の倒産予測値を全件ダウンロードすることができます。
変動情報
A社が独自のネットワークで入手した情報を随時E-mailで通知してくれ、画面上(一部電話)で確認できます。経営環境に関する情報から信用に関する譲歩まで、取引先の変化や動きをリアルタイムで提供してくれ、的確な経営判断をサポートしてくれます。
主な変動情報は、①代表者変更、②合併、被合併、③変更債権者名簿記載情報、④業績予測、➄プレスリリース、⑥信用に関する情報、⑦資本移動、⑧倒産関連、➈調査報告書更新情報などです。
与信基準額算出
「与信基準額」は、信用限度(与信限度額)を設定する際の参考金額です。5つの算出ロジックを設定することで、予測値グレードによる「倒産リスク」を加味した基準額が算出できます。
与信管理方針決定
取引先ごとのリスクに対応する具体的な行動指針を提示、与信判断を体系的に管理することができます。具体的には、与信基準値と予測値グレードに応じた与信管理方針を設定することで、取引先ごとの与信管理方針を自動判定して、登録企業メイン情報画面に表示します。決裁業務を明確化し、社内の方針も一元化され、業務フローもスムーズになります。
(2)料金体系概要
登録企業数 | 利用料金(本体価格) | |
---|---|---|
初回登録月 | 一律 | 1社あたり3,000円/月 |
登録2ケ月目以降 | 1~10 | 1社あたり2,000円/月 |
11~40 | 1社あたり1,700円/月 | |
41~100 | 1社あたり1,500円/月 | |
101~200 | 1社あたり1,300円/月 | |
201~500 | 1社あたり1,200円/月 | |
501~ | 1社あたり1,100円/月 |
B社の取引先モニタリング管理サービス
(1)モニタリング機能
B社の取引先モニタリング管理サービスも基本的にはA社と同じで、取引先の信用状況の変化や企業データの変更があった場合、E-mailで知らせてくれます。それぞれの取引先のリストをみれば、取引先の何が変わったのか、直ぐに確認することができます。取引先の変化は格付情報、裁判情報、会社情報、決算情報など20以上の項目について通知してくれます。
(2)顧客管理機能
検索した企業データは全て管理ファイルに格納され、いつでもデータの閲覧が可能です。取引先の与信管理について、Excel/CSVでのダウンロード、与信限度額(希望限度額)や債権(務)などをアップロードし、管理することができます。
(3)見舞金、見舞金共済サービス
B社の取引先モニタリング管理サービスには、モニタリング登録先が倒産した場合、見舞金が支払われます。倒産判明時点より遡って、6カ月以上継続してモニタリング登録されている取引先には見舞金が、2カ月以上継続してモニタリング登録されている取引先には見舞金共済サービスが受けられます。見舞金は5万円から50万円まで、見舞金共済サービスは一口あたり最高30万円です。
尚、B社の取引先モニタリング管理サービスの料金は月5万円からとなっていますが、詳細は不明です。
C社の取引先モニタリング管理サービス
C社は世界的に取引信用保険を取り扱っている会社で、世界240カ国の企業情報を有し、世界16カ国に審査チームを配置した、その与信管理専門能力を生かし、独自の信用格付けにより、取引先の与信限度額の目安を提示しています。具体的には格付けに応じた与信限度額の目安を提示しています。自ら保険により取引先の信用リスクを取っている為、信頼性があるといわれています。
格付は決算書の更新、大株主や経営層の変更、電話や必要に応じた訪問取材、カントリーリスク、業界動向情報、グループの変動情報等により更新され、格付けに変更があった場合、E-mailで通知してくれます。
また、別途1,000万円以上の与信額の設定、もしくは企業が設定した与信額の適切性について、専門の担当者が、与信判断(与信限度額)を提供するサービスがあります。つまり、保険による補償はありませんが、取引信用保険における与信判断と同様の与信限度額設定のアドバイスが受けられます。モニタリングは与信限度額の減額の場合、E-mailにより通知されます。既存保険契約者はこのサービスで出された額を実際の保証付きの与信限度額に置き換えることができます。
更に、C社は当社の保険分析をベースに取引先が12か月以内に債務不履行を起こす確率を推計財務体質、収益性、環境、経営管理状などにより分析した「モニタリング付き企業評価」をしています。この評価の特徴はリスク量が世界共通であることです。例えば日本で6点の企業も、中国で6点の企業も同じ債務不履行発生確率を示します。モニタリングサービスは格付けが変更になった場合、通知を受けられます。
尚、サービス料金については取引先の対象国、並びにサービス内容により異なり、詳細は不明です。
以上