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交易条件・11年ぶり悪化幅、資源高の価格転嫁に課題

はじめに

原油高を起点とした資源価格の上昇が景気回復のリスクになりつつあります。原材料の輸入のコストと輸出価格との関係を示す交易条件は11年ぶりの悪化幅となっています。価格の転嫁がうまく進まなければ企業の収益の押し下げの原因にもなり得ます。新型コロナウイルスの影響で先行きが見えない中でさらなる景気への悪化・不透明感が消えません。

輸入物価指数が上昇

日銀がまとめた円ベースの輸入物価指数は6月時点で前年同期比で28.4%上昇しました。比較の可能な1981年以降で最も高い上昇率となっています。輸出物価指数と11.5%上昇にとどまっていて、輸出物価を輸入物価で割って計算した交易条件は前年同期比で13.2%悪化しています。悪化幅は2010年5月のマイナス14.2%以来の大きさとなっています。交易条件も7月もマイナスと13.1%と2桁の悪化が続いています。

原油価格の上昇が大きく影響

原油価格の上昇が輸入物価に大きく影響しています。代表的な価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物の期近物は一時1バレル=70ドル台半ばと2014年11月以来の高値をつけています。新型コロナウイルスの影響で経済活動の回復で需要が高まる中で産油国の供給の不安が上昇しました。今後欧米を中心に経済活動の正常化が進んでいくであろう中で資源価格全体が強含む可能性があります。

交易条件は判断材料の1つ

交易条件は景気の先行きを示す指標の1つです。三菱UFJモルガンスタンレー証券の景気循環の研究所の嶋中氏が株価に4四半期、企業収益に6四半期先行して動いています。交易条件は昨年7月から9月期から悪化傾向で「2022年の企業収益に対して懸念の材料になります」と話しています。

経済全体の交易条件を金額で示した国内総生産(GDP)統計の交易利得の縮小しています。20年10月から12月期に4兆2000億円だった交易条件は21年4月から6月期のマイナス1.7兆円と5四半期ぶりにマイナスに転じています。内閣府が7月に公表した経済見通しの年央計算によると、21年度のGDPデフレーターは前年比0.6%低下と3年ぶりにマイナスになっています。昨年末にまとめた政府経済の見通しでは0.3%の上昇となりました。昨年末にまとめた政府の経済の見通しでは0.3%の上昇でした。21年の実質の成長率は名目を上回り、デフレの象徴である名実逆転の状態に戻ります。

デフレ脱却は難しいかも

デフレの脱却で政府が重視してきた指標はGDPデフレーターのほかに3つあります。いずれも低下しています。生産活動に必要な賃金の動きを示す単位労働コストは4月から6月期は前年同期比で5.2%低下、消費者物価指数(CPI)も基準見通しを受けてマイナス圏に沈んでいます。需給ギャップは25兆円程度の需給不足に陥っているとみられます。アフターコロナを見据えてデフレからの完全な脱却に向けての経済政策をどのように打ち出していくかが今後の焦点になります。

参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA137VL0T10C21A7000000/

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