損保ジャパンが企業の資金調達を保険で支援していきます
はじめに
企業の資金調達に保険を使う方法がクローズアップされてきました。商品の販売から代金の回収までに時間のかかる企業に銀行が融資を行うときは、売掛金の回収可能性までを考えた上での融資を行っていく必要があります。
今回その売掛金の回収可能性を判定、そのリスクを引き受けていくサービスを損保ジャパンが始めることにしました。企業は融資を受けやすくなります。また確保した手持ちの資金で次の仕入れを考えることもできます。
資金繰りは企業にとっての永久のテーマ
企業は商品やサービスを提供後、代金が手元に届くまでの売掛期間の資金調達をどうしていくかは大きな課題になります。売れ行きが良くても、手元になければ次の仕入れをすることができません。財務省の法人企業統計によると、国内にある売掛金は200兆円以上あるものといわれています。この200兆円をしっかりと評価して銀行への融資判断に使うことができると、企業活動にも大きなメリットになります。また同時に新型コロナウイルスで打撃を受けた企業の業績の回復にもつながります。
審査のコストも大きい
ただ銀行がこの売掛先の調査をする手間とコストは半端ないものになります。売掛金の回収に時間のかかる企業が融資を受けるとなると、銀行はその企業の取引先の財務状況などをすべて把握しなければならなくなります。また融資をした後も担保価値が維持されているかもチェックをし続ける必要があります。売掛金の回収ができなければ、企業だけでなく銀行も倒産する可能性もゼロとまではいえません。
このような沿革もあって銀行は売掛金を資産として評価してきた融資を積極的に手がけてきませんでした。
売掛金の調査をAIに判定させる
そこで損保ジャパンは電子債権に強みを持つトランザックスと収納代行に強みを持つ電算システムの3社でAIによる売掛金の調査のシステムを開発しました。
この仕組みは以下のようになります。
1:企業が商品やサービスをお客様企業に提供します。
2:売掛債権などの回収に時間がかかると判断した場合、企業は銀行に融資を申し込みます。
3:銀行の持っている売掛債権の情報を損保ジャパンが共有します。
4:損保ジャパンは開発したAIを通して、どの程度の融資が可能なのかを判定します。それに基づいて融資可能額を判定します。
5:銀行は企業に融資を行います。
6:お客様企業はトランザックス及び電算システムに購入代金を支払います。
7:銀行は2社から資金を回収します。
電子債権で複数の売掛金をまとめて担保にできます。売掛金からの支払いは企業を経ずに銀行に入ります。担保としていた売掛金が流用されて融資の焦げ付くリスクが減ります。損保ジャパン・トランザックス・銀行の3社で企業から入ってくる利益を分けます。また電算システムは手数料を得ることができます。またお客様企業が資金を払えない時は損保ジャパンが銀行に保険金という形で支払いをします。
融資対象はコロナで影響を受けてしまった今後の期待できる成長企業
融資対象は不動産などを担保にできず、多少の高い金利を払ってでも資金を得たいという中小企業です。コロナによって事業の見通しが立たなくなってしまった企業の救済というよりは、成長企業の後押しを狙っていきます。5月から全国の銀行や信金に提携の打診を始めています。数年後には1000億円の融資ができるようにしていく方向です。
融資の判定が格段に早くなった
損保ジャパンは、取引したことのある200万社の企業の売り上げや利益・資本関係などを基に、10年分のデータをAIに学習させています。2019年からは企業の取引信用保険の引き受けに「AI」を活用しています。そこから丸1日かかっていた保険料の算定を5分程度で行えるようにしました。今回はこの技術を応用し、早ければ銀行から要請を受けたその日に融資限度額が算出できるようにしていきます。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60702820T20C20A6EE9000/