世界経済は5.8%成長予想とOECD
はじめに
経済協力開発機構(OECD)は5月31日、2021年の世界の実質の経済成長率が5.8%になるという予測を発表しています。新型コロナウイルスワクチンの普及なども踏まえて、3月時点から予測から0.2ポイントを上方修正をしました。米国や中国の景気回復がけん引していきます。ポストコロナを見据えて世界経済の着実な回復を見込む一方、新たな変異のウイルスやインフレのリスクを指摘しました。
前回よりも上方修正
今年3月に発表した前回の見通しでは、世界の経済成長率は21年に5.6%と見込んでいました。最新の米中の景気回復の度合いを踏まえて、より上方修正をしてきました。アメリカの21年の成長率の予測は6.9%で前回の見通し6.5%よりも0.4ポイントも上昇しています。さらに中国は8.5%と前回よりも0.7%の上方修正を見込んでいます。アメリカではコロナウイルスのワクチン接種が進んで、バイデン政権の経済対策で個人の消費が回復をしていることが背景になっています。また中国ではコロナウイルスの蔓延も収まって、経済活動も順調に進んでいるとのことです。
日本に関しては下方修正
ただ日本は前回の2.7%の上昇から2.6%の上昇に留まるのではないかという下方修正の発表になりました。輸出の回復は続くものの、ワクチン接種の遅れと潜在的な成長率の低さが響いています。OECDは「接種のペースが遅く潜在的な成長の阻害にもなりそうな感じがする。またOECD諸国の中でも接種は遅い方」という予測が出ています。
また緊急事態宣言を少なくても6月20日まで再延長したことも「消費が落ちる」という流れからネガティブ要素になるという判断をしています。日本の国内総生産(GDP)がコロナ前の水準に戻るのは2021年後半と見ています。感染拡大が引き続いて大きなリスクになると見ています。「夏のオリンピック・パラリンピックの開催にも影響が出る」という危機感も出ています。
変異ウイルスにも警戒が必要
世界全体では新たな変異ウイルスの発生やインフレのリスクにも警戒をすべきという意見も強く出ています。先進国を中心に景気の刺激策を多く出しているので、インフレのリスクが以前より高くなっているという懸念も出ています。
日本への経済対策の提言も
経済の見通しに合わせて、日本政府への政策の提言も公表しています。経済を下支えするために、短期的な財政支出の継続の指示をしていく一方で、感染の拡大を食い止めた後は財政の健全化に向けた努力を再開していくという流れになりそうです。
失業者も多い
新型コロナによる経済活動の制限の影響で職を失った人も多くいます。政府には職業訓練や教育・雇用の機会をより拡充するように促しています。コロナ後の景気回復を持続させるためには「デジタル化や脱炭素に向けての構造改革が有効」という提起をしています。労働生産性を高めていく働き方改革の加速も求めています。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA314ED0R30C21A5000000/